〈予言〉選挙に勝ちたい安倍首相は消費税を上げられない
「増税」は安倍政権にとっては選挙に勝つための手段
■首相と財務省のしがらみ
実は、歴代首相が使わなかった〝サプライズカード〟を、安倍首相だけが使うことができたのには理由があります。それは、安倍首相は財務省とのしがらみがない珍しい首相だからです。
冒頭で挙げた大平元首相は大蔵省出身で、竹下元首相、橋本元首相、野田元首相は、揃って大蔵・財務大臣出身です。彼らは、財務省にとって自分たちの意向を通しやすい身内のような政治家です。
ところが、安倍首相は財務省出身者でもなければ、財務大臣経験者でもありません。財務省とはしがらみがなく、選挙のために「消費税増税先送り」を表明しても、財務省の影響が及ばないポジションにいるのです。
財務省にとっての最重要課題は、何と言っても消費税の引き上げです。これは省を挙げての悲願とも言うべき課題で、多くの財務省員が長年にわたって尽力してきました。
例えば、財務省には「消費税の説明要員」といってもいい人たちが多く存在しています。彼らはマスコミや大学教授など、公に発言する人に担当としてついて良質な関係を築き、「消費税を上げる」という方向に考え方を変えさせることが大きな仕事です。
何を隠そう、私のところにもそうした官僚が来て、何度かお会いしたことがあります。ただ、私が消費税増税とは真逆の反対派なので、最近は諦めたのか来なくなってしまいました。
こうしたロビー活動は、いまでも熱心に行われているはずです。なぜなら、財務省の中では、消費税増税に尽力した官僚が出世していくからです。
「消費税増税」は、国民にとって大切なお金を左右する重要な関心事です。
しかし、安倍政権にとっては選挙に勝つための手段に過ぎず、財務省の官僚にとっては出世のための手段に過ぎません。政治家や官僚の常識と一般の人の常識は、大きく異なっているのです。